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竹バッグの出来るまで


作業工程 その1竹みがき

竹バッグや花かごができるまでの作業手順や道具などを紹介します。

竹磨き1

丸い竹をそのまま割っていき、
作品つくりに入ることもあるが、ほとんどの場合表 面のガラス繊維を磨き取ることから始まる。
竹の表面には硬いガラス繊維で覆われていて、
それが竹の持つ艶を出しているのだが、
ガラス繊維のお陰で染料とか 漆がしみ込み難い。

竹磨き2そのため、竹細工独特の道具である「磨き包丁」を使ってガラス繊維を削り取っていくのだ。少しずつ、幅3mmくらいずつ竹を回しながら 磨いていく。
面白いものでこの最初にする作業が作品を仕上げるときの最後の艶出しに答えが出てくる。まるで、人生教訓のようだ。
丁寧に少しずつ、女性を扱うように!力を入れすぎて削り過ぎると艶がなくなってしまう。均等の力で!力にばらつきがあると、表面に凸凹の傷ができてしまう。磨く音を聞きながら、磨かれるときの熱を感じながら!均一に均一に!


作業工程 その2 竹みがき

竹磨き3「磨き包丁」竹細工独特の道具である。
良く似たもので、桶屋さんが使うとか、下駄屋さんが使うとか聞いたことがあるが、あまり見かけない。
半円形に湾曲した包丁を竹に垂直近くに立て、竹の表面を剥ぎ取っていく。

伝統工芸で今、一番問題なのは伝統工芸品を作る技術はあるのだがそれに関わる道具や材料を作る人がいなくなっているのだ。どんどん高齢化してしまっているのが心配だ。大分の竹工芸の場合でも、竹工芸がしたいという若い 人は全国からたくさん集まってくるのだが、肝心の竹を切り出す人がいなくなっているし、このような、特殊な道具を作る鍛冶屋さんがいなくなっているのだ。

竹磨き4竹を磨いた時に出る屑だ。
クルクルと丸まって出てくる。
この削り屑を見ると、上手いか下手か判るんだよね。
竹を磨くときの音を聞いていたら、竹を見なくても素人か?職人か?判ります。
この屑を使って、磨き終わった竹を更に磨いてやると良い艶が出るのだよ。


作業工程 その3 菊割り

竹割り2 私 たちが最初にする作業は竹割である。
丸い竹を均等に割る作業である。
竹割り包丁で少しずつ割っていくこともするのだが、このように菊割りを使って一遍に 割ってしまったほうが効率的だ。
この道具を上から見ると菊の花の形をしていることから菊割と言われている。
私のところでは4分割から、13分割まで沢山の 菊割りが壁に吊り下げられている。
どうも、一般の人から見るとこの風景が面白いらしい。


竹割り1竹を割ることはバランスなんですよね。
一般の人に竹を割らせるとたいてい最後までたどり着けないで、
途中でどちらかに削げていってしまう。
右と左のバランスが保てないからだ。
竹割り3年て教わりました。
私も竹を始めた頃、先輩から「まっすぐ割るには3年掛かるんだ」と。


作業行程 その4 竹割り

磨き終わった竹を作ろうとするヒゴ(竹を割ったり、剥いだりして篭を編む材料のこと)に合わせて、割り込みを入れ割っていく。前回の菊割りでまとめて割るときもあるが基本的にはノギスやケガキコンパスで幅を付け、割り込んでいく。

竹割り3

竹割り包丁を竹の裏の方から入れていく。
「木元竹裏」と いう言葉がある。
これは昔から伝わる言葉で木は元から(生えている状態で下から)、竹は裏から(生えている状態で上のほうから)割れという言葉だ。

竹割り4

竹は一見真っ直ぐに見えるが良く見ると右に左に蛇行している。
真ん中真ん中を目指して割っていくのであるが、左右のバランスと崩すとどんどん弱いほうに割 れていってしまう。
長いヒゴ(3メートルから4メートル)を取るときなどは神経を使う。この単純に見えるが基本の作業が大事だ。



作業行程 その5 竹剥ぎ

あ る程度の巾に割った竹を今度は剥いでいく。

竹剥ぎ1これも、竹割りと同じでバランスの問題だ。
表皮に近いほうが硬く強いので、少し薄く。
だいたい、6対4くらいの 割合で竹割り包丁を推し進めて行く。
包丁の刃の部分は最初に竹に裂け目を付ける時に使うだけで、後は手元に付いている胴金という部分で上下に押し広げてい く感じだ。
極端な話、手の指を突っ込んで行っても竹は剥げるのだ。


竹剥ぎ2竹には節があるのだが、この節を越える時に少し力が要る。
節の手前で少し勢いを つけて包丁を引き寄せる。
竹細工でケガをする時はほとんどこの時だ。
竹の性質によってはなかなか割れなかったり、節のところでポキリと折れたり。
この折れ たときに勢い余って左手に包丁を食い込ませる事になる。
私の左手にも竹細工を始めて間もない頃ケガをした痕が今でも残っている。


作業工程 その6 巾取り

巾取り1竹 剥ぎで薄くして1ミリ以下の厚みになった
竹を水に漬けておき少し柔らかくする。
竹は皆さんが思っている以上に硬いのだ。
昔からモノサシの材料に竹が使われ ているが
軽くて変形しない性質のためだ。
乾いた状態の竹を削っていくと刃物の方が直ぐに切れ上がってしまうため、水に浸して柔らかくする。


巾取り2銀杏の木に2本のナイフを打ち込み、
その間に1本1本竹ヒゴを通していく。
2本のナイフの 間 隔が出来上がるヒゴの巾になる。
3ミリのヒゴを取ろうとすると3.1ミリくらいの広さで打ち込む。


2本の刃の角度、ヒゴを引く方向、刃物の切れ味。この三 つが巾取りをする時の3大要素になる。
言葉で書くと大仰だが、実際は無意識に身についてくるものなので 「コンコンコン」と竹割り包丁の裏でナイフをたたいて木に打ち込む。
1本ヒゴを通してみて太ければ、もう少し打ち込む。こんな感じで比較的簡単に巾取りナ イフをセットしている。
写真はちょっとわかりにくいが真ん中で横に続いているのが竹ヒゴです。
中央に2本のナイフが立っており、2本の隙間以上の所が 切り取られていっている所である。竹ヒゴは右の方に引いていくので左手の余分な部分が削り取られることになる。
大体、あぐらをかいて作業することがほとんどであるので、長時間やっているとどうしても腰が痛くなる。腰痛は竹細工師の職業病のようなものだ。

作業工程 その7 面取り

巾 取りを終え、一定の巾になったヒゴの角を落とす作業だ.。

面取り2巾取りの時と同じく、2本のナイフを銀杏の木に打ち込む。
今度はヒゴに対して直角になるように立て るのであるが、右手でヒゴを引き上げるように引き込む。
左手は押さえ竹でヒゴを上から押さえる。このときの力加減で深い面を取ったり、浅い面を取ったり調 節するのである。この面取りの深さで篭の表情が変わる。ヒゴの厚みを計算に入 れてどれくらいの力で抑えるのかを考える。面取りが浅いと少し硬い表情になるし、かといって力を入れすぎて深い面取りをするとヒゴが凸凹してしまう。


面取り1

竹の両サイドから糸のような屑が出てくる。
左右同じ大きさの屑が出てこないと均一なヒゴにならないものだ。
1本、1本をナイフの間を通す事で優しさを引き込んでいくのだ。
面を取りながら、前の行程のチェックも同時にしている。


作業工程 その8 銑引き

銑引き1ヒ ゴ取りの作業としては最後の行程になってきた。
この銑引きでは最後の厚みをそろえる段階である。
暑さを0.3ミリにするのか、0.35ミリにするのか最終 調整するのである。
竹細工の場合は巾よりも厚みの違いの方が影響する。
たった0.1ミリでも全然違った感触になる。
特に細かい網代編みの場合は編み目に隙 間ができたり、持ったときの手触りに格段の違いが出てしまう。


銑引き2銑引きの台の上に刃物をセットして、したの鉄の台と刃物の間に薄い竹を噛ませる。
その隙間をどれだけにするか?で厚みを決めていく。隙間に1本1本ヒゴを通して厚さを揃える。
几帳面な作品を作るときには欠かせない行程である。
逆に竹の素材感ととか、力強さなどをあしらう篭やもっと実用的な篭にはこの行程は必要ない。大体の手の感覚だけで充分である。

以前、研修旅行でお邪魔した宮崎県の広島翁、竹細工暦75年の大先輩曰く、「この道具を教えて頂いた事はそれまでの仕事に比べて画期的な違いがあった。」とおっしゃられていた。おそらく、別府竹細工の中で作られていった道具かもしれない。

作業工程 その9 籐の銑引き

竹かごを作るのに、竹だけですべて作りきるタイプのものと、多くの籠は、細かい細工の所とか、縁の仕上げに、竹よりも柔らかい籐をよく使う。
しかし、柔らかいだけに、竹よりも材料取りには、時間と神経を使うのだ。この作業は、籐の厚みをそろえる作業である。

銑引き3厚みにバラつきのある籐を まず、1ミリくらいに揃えるのだ。
金具に刃物を固定して、下の鉄板と刃物の間を通す事で、
隙間の厚みに揃えていく。
1ミリから、0.8ミリ、0.7ミリ、0.6ミリと少しずつ、
隙間を小さくすることで、厚みを落としていく。


銑引き4この時、私は鉋の裏刃の様な物を取り付け、銑を引いている。
この裏刃のお陰で、柔らかい籐が食い込まないのだ。
あまり2枚の刃の位置が揃いすぎても、籐は引けない。
何でも頃合があるのだ。


なかなかこんな事は、学校や竹細工教室では教えてくれないと思う。それぞれの職人の工夫だったり、独自の作業工程になるので、職人一人一人が違った遣り方をしている。

昔、聞いた話であるが、幅取りのナイフを打ち込む向きが、関東の職人と九州の職人では、向きが逆だそうだ!
始めそんな事を聞いたときは「そんな馬鹿な!」と思ったが、実際、遣ってみると、頭で考えていたほど大きな違いではなく、如何にその方法に慣れるのか?だけである。

私のこの籐の銑引きも、これが正しい訳では無いし、私にはこれが向いているのだ。

作業工程10 染色 下染め

修理  下染めの意味
下染め1先日、10年以上使って貰っているバッグの修理が届いた。
このバッグは、私が竹バッグを作り始めた頃の作品である。
もう、10年以上大切に使ってくれているのだろう。
しかし、さすがに持ち手の皮ひもが擦れて痛んできた。
持ち手の交換と、網目が少しずれて、下地の白い部分が少し見える。


10数年前の初期の頃は、ヒゴの下染めをしていなかった。花篭など、持ち歩かない物はそれでも良かったのだが、バッグなど、普段から持ち歩き、動きの激しい物はどうしても、網目にヅレが出てきてしまう。そんな時には、下地の染めていない部分が出てきてみっともないのだ。

初期の1年目以降は、ヒゴの状態で下染めし、形が出来上がってからもう一度染めている。そうすることで、多少網目が動いても、見た目にはまったく判らなくなるのだ。

もう一度、全部ばらばらにして染め直す事は出来ないので、もう一度、上から漆を塗って、ずれた部分にも漆の色をつけ、あまり目立たない様にすることで対処した。

全体に新しい漆の艶が出て、見違えるようになりました。また、これから十数年可愛がって貰うと思うと嬉しいですね。

我々の作っている作品は、実用品ですから、磨耗したり、ぶつけたり、時には事故にあう時もあります。しかし、そんな時でも、手直ししたり、染め直したり、漆を塗ったりで、何年も何年も使うことが出来ます。

また、使い込むことで、その人しか出せない風合いをかもし出して来ます。使い込んだ時の色合いは、なんとも言えない表情を出してくれるのです。

作業工程11  底編み

作業工程12  立ち上げ

作業工程13  縁の取り付け

作業工程14  本染め

本染め1

作業工程15     漆塗り 1

漆塗り1私の所では、漆を2回掛けている。
1回目で下地を作り、2回目で仕上げの漆と白い埃の様に見えるが、蝋のパウダーを降り掛け、刷り込んでいる。
この為、網目が浮き出たような模様をかもし出す。
上品な質感と艶を出してくれるのだ。


最後の漆がけは、女性に例えれば化粧の様なもので、仕上げが悪いと品が無い。
「良い所へお嫁に行ってくれます様に!」と思いを込めて漆塗りをするのだ。
もちろん、どんなに化粧が旨くても、元が悪いとどうしようもないのだが。
漆を塗っていく度に、表情がどんどん変わり美しくなっていく、手間は掛かるが出来上がった作品を手に取るとニコッとするのだ。

作業工程16  漆塗り 2

漆塗り2漆の刷毛は皆さんが知っているのとは少し違いがある。
一番大きな違いは 刷毛が先から終わりまで通っている事だろう。
習字の筆や絵の具の筆などは、先の使う所だけに刷毛が付いているが、この筆はずーっと真ん中に刷毛が続いている。
写真の左がまだ未使用の刷毛、右が相当私が使い込んだ刷毛である。
元々は同じ長さであったが、長年使い込むうちに、刷毛先が固まってくると切り落とし、新しい所を出す、新品同様の刷毛が出てくるのだ。


漆塗り3

毎回、毎回テレピン油で漆が残らない様に丁寧に洗うのだが、
それでも少しづつ硬くなっていく、
だんだんと使いにくくなった時、切り落として、
また刷毛こしらえをして新しい刷毛として使うのだ。


漆塗り4このヘラも、長年使っているうちに、
微量の漆が少しづつ蓄積されて、最初は暑さが3ミリほどのヘラであったが、
20年使っているとこの様に厚さが2センチ近くまで大きくなってきた物だ。
まるで、鍾乳洞の鍾乳石が少しづつ伸びて行くように、
漆のヘラも大きくなっていく。


作業工程17  漆塗り 3

漆 というのは、乾いた所では乾かない。ちょっとヘソ曲がりなのだが、素人考えで考えると、乾燥していたほうが乾くように思えるのだが、漆の場合は逆で、湿気 が無いと乾かないのだ。適度な温度と湿度があると、どんどん乾いていく。一度乾いてしまえば、乾燥していても、いなくても変わりなくなる。

漆塗り5漆は生きているのだ。
適度の温度と湿度が漆のエネルギーになっている様だ。
私の所では、「室」という乾燥器に入れて乾かしている。
廃材を利用して、開け閉 めにはサッシの窓を付けた。
回りを保温のため、暑さ3センチくらいの発泡スチロールで囲い、<br>保温力を高めてある。
窓ガラスの部分にも発泡スチロールを貼っ てある。これは結露しないようにする為だ。
以前、ガラスに発泡スチロールが貼ってない時に、結露した水滴が漆を塗った作品に落ち、大失敗したことがあるのだ。


うるしぬり6「室」の中には、電気ヒーターのシートが入っており、
その上にスポンジを置く、<br>スポンジに水を含ませ、ヒーターの電気を入れると、
暖かくなり少しずつ湿度が上がっていく。
これも、いろいろ失敗してこの方法に行き着いた。

昔、竹細工を始めたばかりの頃は、ダンボールに霧吹きで湿らせ、毛布などで囲っ てやっていた。
もう少し、量が多くなってきた頃は、お風呂場の中に手すりを付けて、家族みんなが風呂に入った後にぶら下げたものだ。
それも、時たま、湯船 の湯気が直接作品に当たったりすると、白く漆が焼けたりして失敗をしたものだ。
これ位の大きさの「室」を専門業者で注文すると、おそらく100万円位するだろう。
しかし、私の所では廃材やサッシなどで自作したので、全部で5万円くらいで作ることができた。

漆塗り7

最後に、部屋を暖めているストーブ。
このストーブももう20年くらい使っている。
古くて汚いが、暖めるという仕事だけを考えれば、十分役に立つ。
最近のストーブより、シンプルで丈夫な可愛いヤツである。